密接に関連、あるいは連携している
国際・国内研究プログラム/プロジェクト
研究室で進めている研究テーマの多くは、下記にあげる国際プログラムや国内の共同研究プロジェクトに安成やスタッフ、院生が参加することによって、進めている。


<学内プログラム>


名古屋大学21世紀COEプログラム
太陽.地球.生命圏相互作用系の変動学

「太陽・地球・生命圏相互作用系」とは、地球表層のエネルギー源である太陽と、循環を担う地球、およびその循環を能動的に調整する生命圏の三者が一体となったシステムのことを指す。この太陽・地球・生命圏相互作用系に対して、過去の大変動の経過を高精度で復元し、現在の観測からエネルギー・水・物質循環の素過程・機構を解明し、両者の対比から統合モデルを組んで、将来10〜1000年間に起り得る変動を予測する新たな学問が、「太陽・地球・生命圏相互作用系の変動学」である。
安成は、このCOEプログラムの拠点リーダーを務めている。このプログラムは、バイカル湖底泥試料等から過去1000万年程度の地球システム.太陽活動の変動を解析する「高精度環境変動解析グループ」、太陽エネルギー変動の地球システムへの影響、水・)質循環の変動とフィードバックの素過程、および生命圏の気候に対する役割を解明をする「変動機構解明グループ」、そして以上を踏まえて統合地球システムモデルを構築し、システムの理解と将来予測を行う「統合モデリンググループ」から成っている。



平成19年度 名古屋大学地球水循環研究センター 共同研究
「気候システムにおける対流・降水の日変化過程の解明」」

熱帯・亜熱帯地域の陸上及び周辺海洋域では、降水や雲活動の日変化が非常に顕著であり、これら日変化を介した地表面、大気境界層と自由大気とのエネルギー交換が大気循環場の形成にとって重要であることを示唆している。近年、時間的・空間的に高解像度の静止気象衛星データが利用可能になったことや、GCMなどの気候モデルにおいては依然として降水や対流の日変化はうまく再現されておらず、気候モデルにおける系統的誤差を生み出す大きな要因の一つとなっている。
 本研究課題では、現在進行中の国際プロジェクトMAHASRIへの貢献も含め、当センターにおけるこれまでのこの課題に関連した観測的研究、モデル研究の蓄積をもとに、TRMMなどとリモートセンシングデータや、地点降水量データやモデルを用いて、日変化過程の地域特性、季節性の解明を2006年度に引き続き進めるとともに、CReSS, WRFなどの雲解像モデルや、各種の領域大気モデルにより日変化過程のモデリング研究を進め、気候モデルにおける日変化による系統的誤差問題の解明をめざす。この課題は研究の情報交換とモデル結果の比較など、研究集会を中心として進め、気候システムにおける日変化研究の、日本におけるノードとしての役割を担うことも含む。


平成19年度 名古屋大学教育研究改革・改善プロジェクト(総長裁量経費)
2006/2007東南アジアの集中豪雨機構に関する緊急研究

2006年12月から2007年1月にマレーシア,インドネシアを遅い,未曾有の被害をもたらした集中豪雨の発生機構と今後の可能性について,マレーシア政府からの協力要請に基づき,マレーシア気象局,大学の研究者と協力して,調査研究を行う.この集中豪雨は冬季モンスーンに伴い発生したとされているが,過去数十年ありえなかったような豪雨で,現在の「地球温暖化」との関連も視野に入れた調査・研究も必要である.GAMEなどを通した東南アジアモンスーン豪雨システムの地球水循環研究センターにおけるこれまでの研究業績を踏まえて,マレーシア気象局長からの強い要請もあり,HyARCおよび本学内の研究者と連携協力してアジアへの貢献の緊急研究として進めたい.

<国内プログラム・プロジェクト>

海洋研究開発機構地球フロンティア研究センター(JAMSTEC) ・水循環変動予測研究プログラム(兼任)
安成は、このセンターの水循環変動予測研究プログラム(FRCGC/HCRP)のプログラム・ディレクターを兼任しており、このシステムに所属する研究者と、地球規模とアジア地域の気候変動と水循環変動に関する共同研究を進めている。


環境省研究総合推進費問題対応型研究領域
「人間活動によるアジアモンスーン変化の定量的評価と予測に関する研究」

アジアモンスーン地域では、これまで、WCRP傘下のGAMEやUNEP(国連環境計画)のABC(アジア地域褐色雲観測計画)等のプロジェクトにより、アジアモンスーン変化に関連したプロセス研究の蓄積が進んできた。これらの研究成果を踏まえて、この研究では、人間活動がアジアモンスーン気候の変化に及ぼす可能性の高い3つの要素、即ち、全球的な温室効果ガス増加、アジア地域でのエアロゾル量変化、および土地被覆・植生改変に伴うモンスーン降水量の長期的変化を、過去数十年(以上)のデータによる実態解明と高精度気候モデルによる数値実験により、大気・海洋系相互作用や太陽活動などの自然的原因による長期変化成分との分離も含めて定量的に評価することをめざしている。さらに、気候モデルの精度・性能を確認した上で、人間活動要素の将来変化シナリオにもとづき、単独および複合的な効果によるアジアモンスーン予測を行い、それぞれの要素のモンスーン降水量変化への相対的な重要性も含めた定量的評価を行う研究である。名古屋大学、東京大学気候システム研究センター、首都大学東京、海洋開発研究機構の共同研究で、安成は全体の代表者を務めている。


科学技術振興事業団戦略的基礎研究(CREST)
「熱帯モンスーンアジアにおける降水変動が熱帯林の水循環・生態系に与える影響」

このプロジェクトは、タイ・マレーシアを中心に、熱帯モンスーンアジア域における熱帯雨林の維持とその変動機構を、生態学、水文学、気象学などの研究者が共同で進めている計画(代表者:鈴木 東京大学大学院教授)である。一斉開花の気象学的機構も含め、熱帯雨林と気候、水循環の相互作用の実態解明を進めている。安成研究室の院生の一部もこの研究に現地での観測も含め、参加している。



<国際プログラム・プロジェクト>

GAME(アジアモンスーンエネルギー水循環計画)
世界気候研究計画(WCRP)の副計画のひとつであるGEWEX(GlobalEnergy and Water cycle EXperiment:全球水循環研究計画)の一環として、アジアモンスーン変動に関わるエネルギー・水循環過程の解明をめざした国際共同研究プロジェクトとして、GAMEが1996年に開始された。安成は、このGAMEの国際科学パネル議長および国内実行委員会委員長として、このプロジェクトを進めてきた。(このプロジェクトの国際事務局はこのセンターにあり、事務局長は中村健治センター長である。)
安成のこれまでの院生の多くも、GAMEの一環として実施されたシベリア、モンゴル、チベット高原、東南アジアなどの観測に参加してきた。現在、GAME第1期(1996-2001)が終了し、GAME全球再解析データをはじめとする膨大なGAMEデータセットが構築された。GAME第2期(2002-2004)は、これらのデータにもとづく解析とモデル研究が柱であり、この研究室を含む本センターは、これらの研究の日本の中心のひとつでもある。 なお、このプロジェクトは、2005年3月に終了し、現在は、次に述べるMAHASRIに引き継がれている。


MAHASRI(モンスーンアジア水文大気科学研究計画)について
GAMEの後継の計画として,MAHASRI (Monsoon Asian Hydro-AtmosphereScientific Research and PredictionInitiative:モンスーンアジア水文大気科学研究計画)の立案が、国際的にはGEWEX-SSG(科学推進委員会)で、国内的には、日本学術会議IGBP/WCRP合同分科会MAHASRI小委員会(委員長:松本淳東大助教授)で進められているが、2006年10月には正式のWCRP/GEWEX傘下の国際計画として了承される予定である。
MAHASRIは、GAMEでの科学的成果とアジアにおける国際的枠組みを基礎にして、アジアモンスーンの変動機構理解による季節以下の時間スケールにおける水文気象予測システムの構築"をより明確に目標としている。 また、これらの研究を、モンスーンアジア各国における、より社会的なニーズに向けて展開するべく、(1)人間活動(エアロゾル, 土地利用変化, 温室効果ガス増加など)によるアジアモンスーン域での水文気象変動への影響、(2)水文気象モデルおよび予測におけるダウンスケーリングとアップスケーリング、(3)未計測流域における水文予測への陸面水文モデルの適用性、(4)最新の観測・計算技術の利用 などを、その研究計画の重要な実施項目に掲げている。
 この計画ではさらに、GAMEで培われたアジアでの連携基盤をさらに発展させ、観測・データ解析・データ統合およびモデリングにおけるキャパシティービルディング構築を目指しており、アジア各国からの期待も大きい。これらの研究の実施を通して、(a)季節以下の時間スケールにおける水文気象予測システムの利用における予測可能性および鍵となる現象の解明,(b)アジアモンスーン域の特定流域における水文気象予測および水資源管理のためのリアルタイムでの水文気象状態の把握およびモデリングシステムの開発,(c)古い観測データの掘り起こしを含めたアジアモンスーン域の統合的水文気象データベースの構築などの成果をめざしている。
対象とする地域は、インドネシア・海洋大陸地域も含めた全アジア(・オーストラリア)モンスーン地域であり、研究課題や地域での異なるプロセスを前提に、4つの地域でのサブ計画が考慮されている。 HyARCで実施されている研究の多くの部分は、MAHASRIでの研究課題に密接に関連しており、当然のことながら、国内外からMAHASRI計画の推進に重要な役割を果たす予定である。