2005/07/14
院入試説明会(7月2日)の本研究室の説明を掲載します。

【研究内容及び現在実施している研究テーマ】

地球の気候システムの維持・変動の実態とその機構を、水循環過程および生命圏の役割に注目しながら進めています。また、人間活動による温室効果ガスの増加や植生・地表面改変などが気候と水循環の変化にどう影響しつつあるかという問題の解明も視野に入れて、具体的には、以下の3つの研究テーマを柱にしています。

★アジアモンスーンの変動の解明
地球の気候システムおよび水循環を大きく支配しているアジアモンスーンの変動(季節変化、季節内変動、経年変動およびより長期の変動)の実態とそのメカニズムを、観測データの解析と気候モデルによる数値実験により行っています。
★グローバルおよび地域スケールでの水循環変動とその機構解明
温室効果ガス増加などによる人類活動が、地球・地域スケールの水循環を大きく変えるという懸念が、気候モデルによる研究などにより指摘されています。研究室では、過去数十年以上の全球的な観測データと気候モデルにもとづき、全球から地域スケールでの大気と地表面水循環の変動の実態解明を行っています。
★気候システムにおける生物圏(生命圏)の役割・機能の解明
森林・草原などの広域植生と気候の、水循環を通した相互作用過程を、東南アジあの熱帯雨林、モンゴルの草原、シベリアのタイガ・永久凍土系などで、現地観測データと衛星データおよび気候モデルによる数値実験などを組み合わせて研究しています。現在進行中の具体的なテーマは下記の通りです。

• アジアモンスーン気候の変動の実態と機構解明(日変化、季節内変動から数十年変動)
• チベット高原のテクトニックな変化が地球気候に与える影響の気候モデルによる解明(気象庁気象研究所との共同研究)
• 過去数十年と地球温暖化に伴う地球規模・大陸規模での水循環変動と水文気候変動の実態解明
• TRMM(熱帯降雨観測衛星)データなどによる 全球熱帯およびアジアモンスーン地域のの降水量変動の解明
• アジア、ユーラシア大陸スケールの広域植生と気候の相互作用の気候モデルによる解明(地球環境フロンティアとの共同研究)
• ボルネオ熱帯雨林域における気候・水循環・生態系の相互作用過程の観測的研究(東京大学などとの共同研究)
• モンゴル草原生態系の維持と変動の機構についての水文気候学的研究(モンゴル環境省などとの共同研究)
• シベリアでのタイガ・凍土システムの維持・変動の気候学的研究(地球環境観測センター等との共同研究)
Key word: 気候システム、アジアモンスーン変動、水循環、植生・気候相互作用、チベット高原、ボルネオ熱帯林、モンゴル草原、シベリアタイガ・凍土系、同位体水文気象学、気候モデル、地球温暖化

【研究室のメンバーの研究テーマ】
• 藤波初木(助手):チベット高原域などでの対流活動変動の研究
• 阿部 学(COE PD研究員):チベット高原の上昇がモンスーン気候に与える影響の数値実験
• 宮崎千尋 (HyARC PD研究員):シベリアからの寒気吹き出しとその熱帯モンスーン域への影響
• 梶川義幸 (科研費 研究員):アジアモンスーンの季節内変動と経年変動に関する実態解明
• 高橋 洋(D3):東南アジアモンスーンの季節変化と年々変動の機構解明
• 市川裕樹 (D2):TRMM衛星データ等による熱帯降水・対流活動の変動の実態と機構解明
• 金森大成 (D2):ボルネオ熱帯林域での降水量変動の実態と機構解明
• Prasanna V.(D1):気候モデルによるアジアモンスーン地域の水循環変動の長期変動と予測に関する研究
• 堀川真由美 (M2):同位体水文学的手法によるボルネオ熱帯林域での大気・植生間の水循環過程の解明
• 田中英貴 (M1): ISCCP( 全球雲気候学)データによる雲・気候の相互作用の解明

【その他】
本研究室では、現地での観測、衛星データなどの広域をカバーする観測データの系統的な解析、大気大循環モデルなどの最新の気候モデルによる数値実験などを、それぞれ得意とするところで進めますが、まず、生の自然、気象・気候を観察する、観測することに興味のあることが重要と考えます。同時に、地球の気候や環境への広い視野と関心を持ってオールラウンドに研究を進めることも非常に重要と考えます。このような意欲のある学生諸君の参加を大歓迎いたします。